1年生の最初に扱われる教材です。最初だからこそ、抑えるべきポイントをしっかり抑える必要があります。
1年生の算数は、大人にとっては「当たり前」なことがほとんどです。
そのため、大事なポイントを他の学年よりも見落としやすいので注意が必要です。このページでは、1対1対応を児童が身につけるための授業のポイントを説明します。
まずは、下の絵を見てください。

パンダがいますね。パンダと傘のどちらが多いかを考える問題です。
「かさがたりなかったら、パンダさんが濡れちゃうね」などと会話をしながら進めていきます。
もくじ
ポイント① 数はかぞえない
この学習では、「かさが6本、パンダが5頭、6と5で6の方が大きいからかさの方が多い」という考え方はしません。(もちろん、このような考え方を否定してもいけません。)
大抵の場合、児童は「かさの方が多い」と答えるでしょう。
そこで、本当にそうなのか わかる方法を考えさせます。
ポイント② すんなり線で結ばせない
かさとパンダを線で結ぶ活動に入っていきます。
定規で線を引くのは2年生なので、1年生では線は曲がってしまって構いません。

上のように線で結びますが、
「かさとパンダさんを線で結びましょう」
では、実態に即した活動とは言えません。
線はどちらから引き始めますか?
かさとパンダを線で結ぶ際に、かさから線を引きますか?それともパンダから線を引きますか?
「そんなこと、どっちでもいいよ」と考える人がいるかもしれませんが、算数は生活と大きく結びついています。できる限り、生活に近い活動にさせていくべきです。
「パンダが かさを 取りに行く」場面であれば、
パンダ(使う人)がかさに向かって行きますよね。
そのため、パンダからかさに向かって線を引いた方が、よりよい実際の動きに即した活動だと言えるでしょう。

一方、「パンダさんに かさを 配ってあげよう」という場面であれば、
かさからパンダへ、線を引くことが求められます。
よくばりパンダ
子ども達は、かさとパンダを線で結べばいい と考えますね。ここですんなり、正解を出してはいけません。下のように、

1頭のパンダが、いくつかのかさを取ってしまう場面を提示しましょう。
また、下のように、

他の人と同じかさを取ってしまうパンダがいる場面も提示しましょう。
どちらも、よくない見本です。では、どこがよくないのでしょうか?
子ども達は「1人1本だよ」、「1頭のパンダさんが、1本のかさだよ」と言い始めるでしょう。
これこそまさに、1対1対応の基礎となる考えです。
「1頭のパンダに1本のかさ」という当たり前のことをしっかりと抑え、指導しましょう。
ごちゃごちゃな線
「1頭のパンダに1本のかさ」を持たせることを確認しました。それでは、下のように書いた子はどうでしょうか。

確かに、1対1対応ができていますね。しかし、間違えではありませんが、わかりにくいですね。
「もっとわかりやすく線を引く方法があるといいんだけど…」と投げかけ、

最も適切な正解に、たどり着けるようにしましょう。
上の展開のように、最も適切な正解は、最後までとっておきましょう。間違えている子がいなければ、授業者がわざと間違え、どうすれば正解になるのか、どこが間違えたのかを考えさせましょう。
線が引けなかったらどうする?
パンダとかさは鉛筆で線を引くことができたので、数の大小を比べることができました。それでは、線を引けないものはどのように大小を比べればいいのでしょうか。
線を引けないものの例として、指導要領解説算数編には、
・音などの目に見えないものの回数
・車などの動いているものの数
・遠くにある木などの手元で操作できないものの数
が挙げられています。ここでは、手拍子と足拍子の数の大小を比べる学習で説明します。
授業者が手を5回たたき、足を4回ならし、どちらの数の方が多かったかを考えさせます。
ここで登場するのがブロックです。それでは、ブロックで数の大小を比べる際のポイントについて説明します。
ブロックを一定間隔で並べる
ブロックを手拍子や足拍子の数に合わせて出すことができたら、そのブロックを並べる必要があります。その際、下のように、

ブロックの間隔が一定でなかったり、一方の端が揃っていないと、見てすぐに、どちらの数が多いのか、判断に迷ってしまいます。
これも当たり前のように感じますが、

上のように、きちんとそれぞれのブロックを等間隔で、(上と下のブロックがきれいに並ぶように)置くということを指導しましょう。
色分けをしよう
下のように、同じ色のブロックを使って並ばせる子もいます。

間違えではありませんが、色を変えた方がわかりやすく、間違えにくいことも教えてあげましょう。
このように、1年生の算数では、「当たり前」のことを1つ1つ丁寧に教えてあげることが大切です。
子どもの発言に対して、「どうですか?」→「同じです」というやりとりではなく、
「本当にそうなの?」、「このやり方はどう?」、「どうやって考えたの?」
と思考を深める授業にしていきましょう。