数というものは、目に見ることはできません。
では、我々は、どのようにして数と出会い、数を理解していくのでしょうか。
もくじ
数と量は違う
学習指導要領解説には「数量」という言葉が多く出てきます。「数量」は「数」と「量」をまとめて表現したに過ぎず、「数」と「量」は別物です。
詳しくは下のページを参照してください。
数との初めの出会い
私には2人の子どもがいます。その子ども達の成長を見ていると、人がどのようにして数と出会い、数という概念を獲得していくのかが見えてきました。
間接的に触れ合う「数」
まず、人間が生まれて最初に触れ合う「数」は、赤ちゃんの周辺にいる人の会話の中にあります。
「〇月〇日〇時に生まれて、○○グラムだよ。」
「ミルクを〇mL飲んだよ。」
といったように、他者と他者の会話の中で聞くことになるでしょう。もっとも、この時に、数というものを意識している赤ちゃんはいないでしょうが…。
それでは、赤ちゃんが数と直接的に触れ合うのはどのようなときでしょうか。
直接的に触れ合う「数」
飽くまでも、私の経験ですが、赤ちゃんが、「数」に直接触れ合う月齢は、生後9か月ごろです。
9か月ごろの赤ちゃんは、物をつかめるようになり、人と接する行動をとるようになってきます。その中で、多くの赤ちゃんが最初に数に触れ合う場面は、離乳食です。
もう1つ
9か月ごろの赤ちゃんは、手づかみ食べができるようになり、食べ物が固形になっていきます。手づかみ食べが始まると、
たくさん食べる赤ちゃんには、「もう1つ食べる?」
あまり食べない赤ちゃんには、「もう1つ食べなよ。」
と数が登場することになるのです。
量が1つでは、数の概念は獲得できない
数と出会った赤ちゃんですが、ここからどのようにして、「1とは何か」という概念を獲得していくのでしょうか。
下の絵のように、数と出会ったとしましょう。
次の日も、おかわりをして、数と出会ったとしましょう。
次の日も、その次の日もず~~とおにぎりをおかわりして、「もう1つ」「もう1つ」と繰り返すとします。
すると、この赤ちゃんにとって、「1つ」というものは、おにぎりの範疇からでることはありません。
共通項に気づかせる
数の概念を獲得するためには、「1+(助数詞)」に、たくさん触れ合わせなくてなりません。
遊びや読み聞かせ、食事などの様々な活動の中で、上の絵のような「1+(助数詞)」にたくさん触れさせます。この経験を何度も重ねていくうちに、「1」というものの共通点に気づき、「1とは、物が1つある状態なのだ。」(この言い方はかなり変ですが)と理解するのです。
日本語の場合、助数詞によって、1(いち)だい、1(いっ)こ、1(ひと)つと読み方が変わるので、難しいですね。
蛇足:色の獲得
数の概念の獲得は、色の獲得とも似ています。
例えば、赤ちゃんに、赤いクレヨンだけを見せて、
と毎日毎日、教え続けるとします。
すると、ポストやトマトを見て、「赤だ。」という概念は形成されていません。
飽くまでも、その赤ちゃんの中では、「赤クレヨン=赤」に過ぎないのです。
赤という概念を獲得させるためには、
トマト、ポスト、イチゴ、リンゴなどなど、赤いものをたくさん提示し、「これも赤、これも赤」と共通点に気づかせていくのです。