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算数の基礎

算数の授業における『見通し』のもたせ方

投稿日:2020年5月30日 更新日:

見通し」という言葉は、平成29年告示の学習指導要領解説算数編では、95回出てきます。

旧指導要領時には、22回しか出ていません。算数の授業において、「見通し」を重視しなくてはならないことが、よくわかりますね。

授業における「見通し」は、以前の授業でも行われていました。

しかし、多くの場合、児童が無意識に行っていたのです。

その「見通し」を意識化し、学級全体で共有していかなくてはなりません。

それでは、なぜ「見通し」は大切なのか。「見通し」をさせるにはどうすればよいのかについて解説していきます。

「見通し」の大切さ

「見通し」は「やる気」の源

問題を解こうとする児童は、どうすればよいのかわからない迷子の状態です。目的地までの地図さえあれば、安心して道を進むことができますよね。

問題と出会ったときに、「どのようにすれば問題が解けるだろう」というゴールまでの道筋(下で説明しますが、これは『解法の見通し』)が持てれば、後はその道筋をたどっていけばよいのです。

「見通し」は、算数が苦手な児童にとって、ゴールを指し示す光なのです。

算数が苦手で、問題を解く気になれない児童でも、ゴールがうっすら見えていれば、やる気が出てきます。「見通し」は児童の「やる気」に繋がります。

「見通し」と「見積もり」の違い

「見通し」と似た言葉で、「見積もり」という言葉がありますね。大辞林で意味を調べると、

見積もり:必要となる程度をあらかじめ予測して算出すること

とあります。

「答えはどのくらいになるのかな。」と見通した数値が「見積もり」です。

答えの見通しを行い、実際に出た答えと照らし合わせることで、誤りを訂正することができます。

5種類の「見通し」

授業中の「見通し」は、簡単に分けて5種類あります。

  • 問題の見通し
  • 可能性の見通し
  • 解法の見通し
  • 答えの見通し(見積もり)
  • 発展的な見通し

です。

授業の流れに沿って、これらの見通しが、どの段階で働くのかを表で見てみましょう。

授業中のあらゆる場面で、「見通し」が働いていることが分かりますね。それでは、それぞれの「見通し」について、詳しく見ていきましょう。

 

問題の見通し

授業の初め、

「りんごが6こあります。」

と板書をしたときに、児童の頭の中では、

「このりんごを食べるのかな?」

「もっと買ってくるのかな?」

「何人かで分けるのかな?」

と、ストーリーの続きが想像されています。

これが、『問題の見通し』です。

 

私が授業するときには、(時間に余裕がありそうなら)

「りんごが6こあります。」と書いたら、手を止め、

この続きはどうなると思う?」と児童に問います。

勉強ができる子は、

「食べたらひき算だ」

「買ってきたらたし算だ」

「分けたらわり算だ」

と、待ち構えながら問題を読んでいるのです。

 

教科書には、「あわせていくつ」などの題がついていることがあります。

私は、この題は絶対に板書をしません。

「あわせていくつ」とあれば、たし算であることは明確です。児童の学びを1つ潰してしまいます。

これは、文章問題が苦手になる要因にもなります。

 

可能性の見通し

『可能性の見通し』とは、簡単に言えば、問題を見たときに、

できそうか、できなそうか を考える ということです。

例えば、

2020≡3(mod 500 )を満たす正の整数nの最小値を求めなさい。

と言われたときに、問題を解こうとする以前に、

「こりゃ解けそうに無いな!」、「これくらいなら解けそうだな!」

と判断をしますよね。これが『可能性の見通し』です。

「こりゃ解けそうに無いな!」と判断した児童の単体での学びは、この時点で終了です。わからないものは考えてもわからない!という状況ですね。

そこで、他者から出た『解法の見通し』で、「できそうかな…。」に変えてあげる必要があるのです。

 

解法の見通し

「見通し」と聞いて、真っ先に思い浮かぶのが、この『解法の見通し』ではないでしょうか。

答えを導くために、「この方法ならできるな。」、「昨日習ったやり方でやってみるかな。」と、様々なアプローチを考えるのが、この「見通し」です。

解法は既習事項のみ

小学校段階の算数で、『解法の見通し』で出てくる考えは、ほぼ100%、「既習事項」です。

習っていることを使って(応用して)解く!ということですね。

授業者が「今まで習ったことを使って、解けないかな?」と問うたとき、児童の頭の中では、『解法の見通し』が行われています。

『解法の見通し』は多ければ多いほどよし!

算数の問題は、どんなに遠回りをしても、答えまでたどり着けば勝ち!です。

そのため、『解法の見通し』では、どんなに効率が悪くてもいいので、多種多様な解法を挙げさせましょう。

そして、どんな解法でもよいので、答えまでたどり着いた児童を褒め、認めましょう。

ほとんどの授業では、たくさん出た解法の中で、ベストな方法が『まとめ』です。何がベストな方法かは、児童が決めます!

授業者として、本時の課題に適さない解法を潰すことだけは、絶対にしないでください。(1年生で、定規を使った長さ比べなどは別です)

手を動かせば見えてくるものもある

算数が苦手な子に多いのは、

「ベストな方法を模索しすぎて、問題に手を付けない」

ということです。

算数が得意な子は、

「解き方はよくわからなかったけど、色々やっているうちに、とけそうなやり方が見つかった」

と、よく言います。

『解法の見通し』は、問題を解きながらでも、働かせるのです。

ツールを選ぶ

算数の問題を解く際に、「式を書かなくてはならない」という呪縛に縛られている子が多くいます。先ほども言ったように、算数は、どんな手を使ってでも、答えが出せれば勝ちです。

問題を解決するツールは、式だけでなく、絵や表、線分図、面積図、数直線図、グラフなどなど多岐にわたります。

このツールのうち、どれを使えば問題が解けそうなのか選ぶことも、『解法の見通し』です。

答えの見通し(見積もり)

テストの丸付けをしているときに、

男の子の身長を聞かれているのに「12cm」と答えたり、

学校から家までの距離が「20km」と答えたりしている子をよく見ませんか?

このような、常識的に考えてあり得ない数値を出してくる児童は、『答えの見通し』が行えていません。

「見積もり」もしくは「概算」の学習は、4年生で行います。

しかし、「身長だったら、100cm~200cmの間くらいだろう。」、「りんご1個なら1kgより軽いだろう。」という考えは、低学年でも持っていてほしい感覚です。

先に『答えの見通し』をすることも…

児童の考える解法が、多岐にわたるとき(例えばL字型の面積など)の授業では、先に『答えの見通し』を行って(もしくは答えそのものを出して)から、解法をたくさん出させる場合もあります。

算数が苦手な児童は、わかっているゴールに向かって道筋を考えばいいので、取り組みやすいのだそうです。

発展的な見通し

最後の『発展的な見通し』は、主に「振り返り」を行うときに働きます。

「今日の学習は、生活のこんなことにいかせそうだな。」

(分数のたし算を勉強した後に)「今日のやり方なら、分数のひき算もできそうだぞ。」

といったように、本時の学習内容を踏まえて、これからの学習を見通すのです。

 

どこまでを見通すのか

『解法の見通し』を行いすぎると、解決時の活動は、ただの作業になってしまいます。

『答えの見通し』を行いすぎると、児童のやる気を削いでしまうこともあります。

 

算数が苦手な子が多いクラスでは、見通しの時間を多くとり、全体で共有する必要があると考えます。

算数が得意な子が多いクラスでは、一人ひとりの頭の中で見通しが行われているので、見通しの時間を少なくし、全体で共有する必要はありません。

学習内容・児童の実態・授業者の意図

によって、何を見通すのか、どこまでを見通すのかを判断しなくてはなりません。

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