小学校最初の図形の学習は、平面図形ではなく、立体図形です。
これは、立体図形の方が具体性があり、立体図形の構成要素として平面図形があるからでしょう。
それでは、小学校最初の図形領域の学習である「立体的な図形」の授業を行う際のポイントについて解説していきます。
もくじ
立体的な物を作ろう
導入では、お菓子の空箱やラップの芯、ピンポン玉などを使って、タワーや動物などの立体的な物を作ります。
用意したい立体図形は、角柱、円柱、球の3種類です。
角柱を用意するのはそんなに大変ではないでしょう。
円柱は、チップスターやプリングルスなどのチップス系の箱に多くあります。
球は発泡スチロールでできたものが百均やネットで売っています。
また、角柱として、コアラのマーチがオススメです。
材料は子どもたちにも持ってきてもらいたいですね。1週間ほど前から準備をして、
1人あたり、角柱、円柱、球をそれぞれ4つずつあると学習しやすいです。
セロテープは使わせない
作り始める前に、「のりやセロテープは使わない」ということを約束しておきましょう。
この学習で児童は、立体的な図形について、転がるか転がらないか(積めるか積めないか)を考えます。セロテープを使ってしまうと強引に球の上に球を乗せる子も出てきます。
(テープ等を使って)乗せられる=積める ではないことも授業の最後には確認しましょう。
作って終わりは図工
立体的なものを作って、
「カッコイイのができたね!」、「大きく作れたね!」、「ここの色遣いがいいね!」と言ったのでは算数ではなく、図工になってしまいます。
それでは、算数の学習にするためには、どのような声掛けが必要なのでしょうか。下のような形を児童が作ったとしましょう。
なぜ、その形をそこに使ったのか?
上のきりんを作った児童は、特に意識をしないで、円柱を立てて足に使っています。そのため、「工夫したところはどこ?」と尋ねても、「首が長い」とか「つのがある」とか算数の学習には繋がりません。
例えば、下のような形を見せて、「先生のキリンはすぐに転んじゃうんだけど、どうしてだろう?」と尋ねてみてはどうでしょうか。(もしくは悩んでいる友達がいたらベスト!)
きっと児童は「これだと足がコロコロしちゃうよ。」「平らなところを下にすればいいんだよ」などと、円柱を図形として着目し、アドバイスを始めるでしょう。
また、下のようなキリンを見せて「首がグラグラしちゃうんだけど…。」と相談したらどうでしょうか。
球(ボール)は転がるから積むことができない。円柱(筒のような形)は向きを変えれば積むことができる。(もしくは転がる)というポイントに気づかせることができます。
多くの児童が、球を足に使うようなことはしないでしょう。なぜしないのか。どのような形なら足にふさわしいのかをしっかりと抑えましょう。
また、車を作った子がいたら、タイヤは球や円柱を使うはずです。どうして、球や円柱を使ったのか、直方体ではどうしてダメなのかを考えさせたいですね。
立体図形の仲間わけ
上記のように授業を展開すると、
「足にふさわしい形」や「足にふさわしくない形」、または、「タイヤにふさわしい形」や「タイヤにふさわしくない形」があることがわかってきます。
そこで、どのような形が足にふさわしく、そうではないのかを仲間わけしていきましょう。
足にふさわしい形=積める形
タイヤにふさわしい形=転がる形
ここで、ぜひコアラのマーチの箱(六角柱)は転がる形なのかを考えさせてみてください。
六角柱は転がる形?
おそらく、半分近くの児童が「(六角柱は)転がる」と考えるはずです。児童にとって身近な六角柱である鉛筆は転がりますからね。
では、転がらないと考えた子はどのように見たのでしょうか。おそらく、「平らなところしかない」とか「丸くない」とか「カクカクしている」と図形として六角柱を捉えているのでしょう。
ここで、六角柱は、「転がらない形です!」と言い切ってもいいのですが、「転がりにくい形」と濁してもいいでしょう。
プラスα:どうして積めるの?どうして転がるの?
積めるのか、転がるのかを判断するとき、児童はどこに着目しているのでしょうか。その着目しているポイントを意識させましょう。
転がる形は、どこかに円(まる)がありますね。
積める形は、どこかに四角がありますね。(円柱は真横から見れば四角)
おそらく児童は簡単に仲間わけをするでしょう。しかし、「どうして?」と問われれば困ってしまう子がほとんどです。
この見方ができれば、六角柱は転がらない形であることもわかります。
図形を多角的に見られるように、発問をしていきましょう。
どっちの仲間にも入る円柱
さて、円柱は、「積むことができる形」の仲間でもあるし、「転がる形」の仲間でもあります。
そこでさらに下のように仲間に分けていきましょう。
「はこのような形」ではなく、「しかくばっかりの形」などのような違った言い方でも構いません。
少しずつ児童が立体図形の面(構成要素)に着目してきていますね。
立体図形の面を使って絵をかこう
さらに児童が面に着目できるように、面を写し取って絵を描く活動が設定されています。
この学習には、四角や三角を使って身の回りにあるものの絵を描くことで、身の回りの物を四角や三角(図形)として捉えるという大事な意味があります。その中で、ぜひ扱ってほしいのが直方体です。
全ての面を1回ずつ使おう
例えば、直方体を使って、「全ての面を1回ずつ使って絵を描こう」とルールを決めたらどうなるでしょうか。
1年生では、「直方体(箱の形)には、全部で6つの面があります」といった学習はしません。しかし、その学習の素地は培うことができます。
もしかしたら、同じ形が2組ずつあることに気づく子もいるかもしれません。
立方体を使ったこの中には、すべての面の形が同じであることに気づく子もでてくるでしょう。
決して、「上手に色が塗れたね。」などとは言ってはいけません。
1年生の学習は、基礎中の基礎であり、児童もすんなりできてしまうことが多くあります。だからこそ、「この学習で何を身につけさせるのか」を授業者が考えないと、「ただ活動して終わり」となってしまいます。
「今日の授業では児童に何を身につけさせるのか」、「今日学んだことが、今後どのようにいかされるのか」を把握して授業に臨めるといいですね。
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