1年生の長さの授業も、直接比較→間接比較と学習が進み、いよいよ最後の任意単位を使った長さの比較に入ります。
(定規を使う普遍単位の比較は2年生)
任意単位による比較の授業のポイントは2つ
- 直接比較と間接比較ができない場面の設定
- 任意単位を使った測定の正しい方法
です。
もくじ
直接比較と間接比較ができない場面の設定
直接比較と間接比較を習った子どもたちですので、どうにかこの2つの方法で長さを比べようとします。
どちらも使うことができない状況に追い込むことで、任意単位の必要性が強調されます。(必要感が高まる)
任意単位を使わざるを得ない場面は、主に2つ
- 測定物よりも媒介物が短いとき
- 長さの違いを「どのくらい」であらわすとき
です。
測定物よりも媒介物が短いとき
間接比較の際には、テープに印をつけて長さを比べました。
このテープは、測定するものよりも長いものを使いましたね。
では、測定するものよりもテープが短かったらどうすればよいのでしょうか。
「テープのいくつ分」で表しますね。
これが任意単位を使った長さの測定です。
長さの違いを「どのくらい」であらわすとき
2つの物の長さを比べて、
「どちらが長い?」ではなく、
「どのくらい長い?」と聞かれたとき、
「このくらい!」では答えになりません。
数値を使って、「〇〇の方がテープ□分長い」と表す必要がありますね。
任意単位を使うということは、長さを数値化するということなのです。
任意単位を使った測定の正しい方法
教科書には、誤った測定方法は示されていません。
授業者が誤った測定方法を示すことで、児童の間違いを減らしましょう。
それでは、実際の授業の流れに沿って、正しい測定方法を説明していきます。
ここでは、前時の流れを汲んで、測定物よりも短いテープを使って、机の横と縦の長さを比べる活動について考えます。
蛇足:理想化
多くの学校で使われている机の角は、まるくなっていると思います。
本時では、机を長方形として見させる必要があります。
そうでないと、角の部分を、下のように測る子も出てきてしまいます。
下の絵のようなものを示し、
ここの長さを比べたいんだよ ということを必ず確認しましょう。
(このように事象を都合よく考えることを『理想化』といいます)
全員で同じ媒介物を使う
アクティブラーニングをさせたいからと、いきなり各々の児童が好きなもの(媒介物)を使って測定を始める授業を見かけます。
各々の児童が違う媒介物を使うと、当然同じものを測っているのに、「いくつ分」が異なります。
すると、自分の測定結果があっているのか、間違っているのかもわからない状況になってしまいます。
はじめは、全員で同じ媒介物を使い、正しい測定ができているのかを確認しましょう。
また、媒介物は、「2こと少し」のように、半端にならないように長さを工夫しましょう。
そのためにも、最初の媒介物はテープがおすすめなのです。
数値化するときには、ひき算も視野に!
「どのくらい長い?」と聞かれた際には、
長い方の長さ ひく 短い方の長さ
を計算する必要があります。
このとき、媒介物をブロックなどの小さいものにしてしまうと、
25−16
など、習っていない計算になってしまうことがあります。
授業者は、数値化された長さを使った計算が、既習の計算で求められるのかを考慮する必要があります。
また、半端があると計算自体もできなくなってしまいますね。
誤った測定方法
児童が測定をして、机のたての長さが「テープ3枚分」だったとしましょう。
「先生は2枚分だったよ!」と、下のように示してみましょう。
1つ目のポイント
長さを写し取るもの(媒介物)は、くっつける(隙間を開けない)
ということを確認します。
続いて、「でもやっぱりテープ2枚分だよ。」と、下のように示します。
2つ目のポイント
長さを写し取るもの(媒介物)は同じ長さのものを使う
「先生の机は、たてよりも横の方が、たくさんテープを使ったよ」
と、児童に、誤った測定方法を想像させる流れでも、おもしろいですね。
数値化することのよさ
縦と横の長さをテープのいくつ分かで表したら、
「どちらがどのくらい長いの?」
と問いましょう。
長さを数値化することで、長さの違いを具体的に表せるようになりました。
「机のたての長さとロッカーのたての長さはどっちが長いの?」
と問えば、すぐに児童はテープを持って、ロッカーまで走っていくでしょう。
長さを数値化することで、長さを持ち運びできるようになったのです。
(長さの持ち運びは、間接比較でもできました。しかし、測定物よりも長い媒介物を持ち歩くという制限がありました。)
各々の測定へ
以上のような活動を経て、測定のポイントを確認したら、各々の好きな媒介物を用いて測定をさせましょう。
活動の前に、半端が出たときは、
「〇こ分と少し」
と表すことを、共通理解しておきましょう。
2年生 普遍単位による長さの比較へ
任意単位による長さの比較は、媒介物の「長さ」が同じであれば、地球の裏側にある物でも長さが比べられます。
逆に言えば、同じ媒介物でも、長さが違えば比べることはできません。
そこで全世界の人たちが同じ長さの媒介物を使おうと考え出されたのが、メートルやヤードなどの長さの普遍単位です。
この普遍単位の学習は2年生で行います。
2年生では、本時のような任意単位による長さの比較をもう一度行ったあと、
「電話の向こうの友達と長さを比べるには?」
「ブロックを持っていない人とも、長さが比べられないかな」
などと、さらに条件を絞ることにより、普遍単位の必要感を高めていきます。
人類が何百年もかけて手に入れた普遍単位を手に入れるまでの歴史を、児童は数時間で経験することになるのです。