小学1年生におけるたし算の学習は、どのような段階を経るのか、また、教科書に出てくる問題の数値はどのように決められているのか解説します。
もくじ
たし算①:繰り上がりのないたし算
一番はじめに習うたし算は繰り上がりのないたし算で、
(1けた)+(1けた)=(1けた)
の計算です。
それでは、この計算を扱うときに、
あなたなら、一番最初のたし算は「何+何」にしますか?また、その理由は?
一番最初に習うたし算が「3+2」である理由
一番最初に習うたし算は「1+1」と答える人が多くいるかと思いますが、残念ながら不正解です。
同じ数字2つを使うのは避けた方がいいと考えられています。なぜならば、
教師が「1が…」と説明したときに、たす数の1のことを言っているのか、たされる数の1のことを言っているのかわかりにくく、説明がわかりにくくなるからです。
そのため、○+△=□ の3つの数字は全て違うことが望ましいのです。
次は、「1+2」と考える人が多いでしょうか。残念ながら、これも不正解です。
1+2=3 を最初に習うと、2+3=4 と数を順番に書けばよいと思ってしまう子が出て来くる可能性があるからです。
次は、「2+1」でしょうか。下で説明しますが、+1というのをブロック操作するのは少し勝手が違うので却下です。
次は、「2+2」ですが、これも1+1と同じ理由で却下となります。
最後は「2+3」か「3+2」で悩むところでしょう。
1年生におけるたし算はブロックを移動することで、答えを求めます。
2+3では3つのブロックを動かすことになりますが、3+2では、2つのブロックを動かせばよく、指先が器用でない1年生にとって、少しハードルが下がります。
この問題のブロック操作では、
と2段階でブロックを動かすのではなく、
というように、1度でブロックを動かすことを教えます。このポイントは、「2+1」では教えられません。
ブロックを操作させる際の抑えたいポイント
以上のように理由により、一番最初に習うたし算は「3+2」です。
私が調べた教科書会社6社全てが3+2でした。合併が5社、増加が1社です。
たし算のパターン(5種類)
次の問題は、「4+3」、「1+3」、「1+2」(3社)、「2+1」でした。「1+2」が多いのは、「3+2」とブロック操作が同じため、難易度が低いためでしょう。
この(1けた)+(1けた)の単元では、
(1けた)+(1けた)=10
まで、学習します。
たし算②:0のたし算
次に習うのは「0のたし算」です。
「何もないところに足す」という考え方が児童にはわかりにくいので、
(1けた)+0 の後、0 +(1けた) を学びます。
多くの場合、玉入れゲームを2回行い、後半が0点だったり、前半が0点だったりして、合計得点をだす場面が多く扱われます。
1社の教科書会社は、繰り上がりのたし算の後に学習する計画でした。児童にとっては0(無いもの)を足す。もしくは無いところに足すというのはイメージしにくく、難しいのでしょう。
たし算③:10のたし算
いよいよ、(2けた)+(1けた)の計算です。
この学習の前には、「10と2で12」という学習が必ず入ります。
(2けた)+(1けた)の式に表す計算は、
「10+3」(2社)、「10+6」(2社)、「10+5」、「10+4」でした。どの教科書会社も、「10+2」を避けたようです。答えが「12」と順番になる(1→2)のを避けたのでしょう。「10+1=11」は同じ数字なので論外ですね。
10+3であれば、10と3→「じゅう と さん」→「じゅう さん」→13と考えます。
1年生では位については習わないので、「1の位の0と3をたして」という指導はできませんので気をつけましょう。
この単元では、12+4など和が20までの計算を学習します。
たし算④:3つの数の計算
次は、(1けた)+(1けた)+(1けた)=(1けた)について学習します。
よくある場面は、バスに乗っていて、1つ目のバス停で数人乗ってきて、2つ目のバス停でまた数人乗ってくるというものです。教科書では、
「5+3+2」、「4+3+2」(2社)、「3+2+4」(2社)、「7+3+4」
でした。1社はいきなり和が(2けた)で、難易度が高いです。その1社以外は、一番最初に学習した「3+2」が入っているのは興味深いですね!
その次は、(1けた)+(1けた)+(1けた)=10+(1けた)となる問題です。ここまで来るとかなり繰り上がりのあるたし算に近づいてきましたね!教科書では、
「6+4+2」(2社)、「6+4+1」、「6+4+3」「9+1+3」でした。「6+4」が4社あるのは、意外でした。
「6+4」を入れている教科書は、その前に、「4+2+4」のように和が10になる計算を4社とも入れていました。「9+1」の教科書は、そのような問題は扱っていません。
この学習では10のまとまりをつくるというのが大切なポイントです。「9+1+3」を扱った教科書は、この段階で10のまとまりを作るんだ!と意識をさせる必要があるので、10に近い数である9を入れているようです。
9+1+3=10+3=13 と計算します。
これは、9+4の計算に非常に似ていますね!
たし算⑤:繰り上がりのあるたし算
いよいよ、繰り上がりのあるたし算の学習に入ります。これだけ、段階を追って、学習するんですね。ここで扱われる数値にも興味深い特徴があります。
「9+4」(5社)、「8+3」という結果でした。
繰り上がりのあるたし算の最初は、「加数分解」といって、たす数を分解して計算します。所謂、「9+2」は2を1と1に分けます。この学習を最初にすると、「9+4」の計算を「9+2+2」としてしまう子がいます。
繰り上がりのあるたし算の教え方については、こちらのページを参考にしてください。この記事を書いた際には「9+3」が一番多く扱われていました。教科書も色々考えられ、数値が変更されていることがわかります。
繰り上がりのあるたし算の教え方
繰り上がりのあるたし算は、これだけ多くの段階を経て、やっとできるようになる学習なのです!
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