5年生の学習の中で、最も難しい単元と言っても過言ではないのが「単位量あたり」です。ここでは、「単位量あたり」の授業をする上で大切となるポイントを説明します。
もくじ
問題
下の3つの部屋の中で、一番混んでいるのはどの部屋でしょうか。(●は人)
表であらわすと、以下のようになります。
「混んでいる」とはどういうことか
一番混んでいるのは「いの部屋」?
児童の中には「いの部屋が混んでいる」と考える子がいます。右下の方に、人が集まって、確かに混んでいますよね。しかし、部屋全体を見ると、決して混んでいないことは明らかです。
まずは、部屋全体に人を均すことが大切です。つまり、「単位量あたり」の考えの根底には、平均の考えがあるのです。
この後、詳しく説明しますが、1㎡あたりに平均何人いるのか。1人あたりの広さは平均何㎡なのか。を考えるのが、「単位量あたり」です。
教科書にはこの「平均」という言葉は「単位量あたり」では出てきませんが、大切なポイントです。
(少なくとも、「単位量あたり」の授業の前に「平均」の学習をしています。)
2つの数量のうち、一方を同じに(統一)する
あの部屋といの部屋を比べてみましょう。
部屋の広さは同じですが、人数が違います。広さを同じにした場合、人数が多い方が混んでいる と言えることを必ず確認しましょう。
いの部屋とうの部屋を比べてみましょう。
人数は同じですが、部屋の広さが違います。人数を同じにした場合、広さが狭い方が混んでいる と言えることを必ず確認しましょう。
中々イメージができない児童には、身近なものに置き換えて説明をしましょう。
例えば、5年1組は30人、5年2組は31人であれば、教室の広さは同じなので、5年2組の方が混んでいると言えますね。
10人で、教室にいるのと、エレベーターにのるのでは、エレベーターの方が混んでいますね。
特に、人数を同じにした場合、広さが狭い方が混んでいる という考えでは、数字が小さい方(今回でしたら8㎡と6㎡の6㎡の方)が混んでいると考えなくてはならないため、間違える児童が多くいます。(数が大きいほど混む と考えている子は多いです。)
そして、どちらか一方を同じにすれば、混み具合が比べられるということは絶対に抑える必要があります。
「いの部屋」が「あの部屋」と「うの部屋」より混んでいないことがわかったので、「あの部屋」と「うの部屋」の混み具合を考えていきましょう。
公倍数の考えで問題を解く
「単位量あたり」で答えを導く前に、公倍数の考えで問題を解いてみましょう。
広さを統一する
まずは、広さを同じにしてみましょう。「あの部屋」の広さ8㎡と「うの部屋」の広さ6㎡の公倍数を考え、どちらも24㎡とします。もちろん、広さを増やした分、人数も増やします。すると、下の表のようになりますね。
広さが同じになったので、人数で比べられます。人数の多い「うの部屋」の方が混んでいることがわかりました。
上で説明したの公倍数で解く考えは、実は5年生で学ぶ(もしくは学んだ)、ある大切な学習に密接に関係しているのです。
それは、分数の加減法です。もう一度、上の表を見てください。人数を分子、広さを分母と考えると、通分をしていることがわかりますね。
人数を統一する
次に、人数を同じにしてみましょう。「あの部屋」の人数5人と「うの部屋」の人数4人の公倍数を考え、どちらも20人とします。
人数が同じになったので、広さで比べられます。広さの狭い「うの部屋」の方が混んでいることがわかりました。
この公倍数で考る解法は、教科書では扱っていません。しかし、この公倍数で考える解法も授業で行うべきでしょう。そうすると、「単位量あたり」の考えの本当の大切なことに、児童が気づくことができるのです。
「単位量あたり」の考えで問題を解く
それでは、ようやく「単位量あたり」の考えで問題を解いてみましょう。
広さを1㎡に統一する
先ほどは、公倍数の考えで広さを統一しました。次は広さを1㎡で統一してみましょう。
1㎡にいる人数が「うの部屋」の方が多いことから、「うの部屋」の方が混んでいることがわかります。
児童にとっては、0.66人という量に違和感を覚える子もいます。「体が切れてるじゃん!」という子もいます。本来であれば、0.66人というのは不自然ですが、「単位量あたり」もしくは「平均」の学習では認められます。
分離量と連続量の意味と違いを知っていますか?
人数を1人に統一する
今度は、人数を1人に統一してみましょう。
1人あたりの広さが、「うの部屋」の方が狭いので、「うの部屋」の方が混んでいることがわかります。
公倍数の考えも「単位量あたり」!
間違ってはいけないのが、上で説明した、公倍数で考える解法も「単位量あたり」の解法の1つであるということです。
広さを統一した解法では、24㎡という単位量で比べ、人数を統一した解法では、20人という単位量で比べているのです。
つまり、「単位量あたり」は必ずしも一方の数量を1にしなければならないというわけではないのです。
しかし、一方の数量を1にした方が都合がよいのです、
例えば、下のように
新たな部屋が登場したらどうしましょう。公倍数の考えでは、5つの部屋の公倍数を考える必要が出てきてしまいます。
一方の数量を1にすれば、新しく登場した部屋についてだけ考えればよいのです。
この一方の数量を1にするという考えのよさを児童に感じさせたいです。