数学における帰納的思考と聞くと数学的帰納法を思いつく人が多いと思います。
小学校の算数でも、数学的帰納法とまでは行きませんが、帰納的な考え方を用いる場合があります。ここでは、数学的帰納法と算数における帰納的な考え方について解説します。
もくじ
帰納的な考え方とは
帰納的な考え方では、
いくつかの事象を調べて、その共通点をさがし、みんなそうなるんだろうな!
と考えるのです。
ざっくり言うと経験則です。
例えば、
月曜日に雨が降りました。火曜日も雨、水曜日も雨、木曜日も雨、さて、金曜日は?
雨だろうな!
という考え方も帰納的な考え方です。でも天気はそんなふうに決められませんよね。
また、児童に身近なところで言うと、金曜日の給食はいつもパンだから、今週の金曜日もパンだろうな!
という考えです。
帰納的な考え方はすべての事象に対して検証するわけではありませんので、危うさを含んでいます。
帰納的な考え方は、「そうなるだろうなぁ」という推測に過ぎません。人間が調べられる事象はどんなに努力しても有限だからです。では、調べられる事象が無限ならどうなるのでしょうか。
数学的帰納法とは?
上でお話ししたように、調べる事象が少ないと、帰納的な考え方は危うさを含みます。
しかし、調べる事象が無限となると話は変わってきます。
それを利用したのが数学的帰納法です。
例えば、「1のn乗は常に1になる。」ということを証明します。
1の1乗は1ですね。1のk乗は1になるとし、1の(k+1)乗を考えます。
1の(k+1)乗は、1のk乗×1です。1のk乗は1なので、1の(k+1)乗は1×1で1になります。kの値にどんな数を入れてもさらにk+1で成り立つ。つまり、無限に検証をすることができたので、証明ができました。
少し難しいですね。一番最初に例示した天気を数学的帰納法で考えてみましょう。
1日目が雨でした。いつかくるであろうk日目も雨だとすると、k+1日目も雨であることが証明できれば、ずーっと雨であることが証明できます。(kにどんな数を当てはめても成り立つので、無限について考えているのと同じ)
小学校では、無限を扱わないので、上記の数学的帰納法は習いません。
しかし、帰納的な考え方をすることは多くあります。
算数における帰納的な考え方を使う場面
三角形の内角の和を求める
三角形の内角の和が180°であることを考える授業では、帰納的な考え方を使います。下の三角形について考えてみましょう。
①3つの角度を測って足す
3つの角の大きさを測ってたすと180°になりました。
②3つの角を一カ所に集める
3つの角を一カ所に集めると一直線(180°)になりました。
上の2つのやり方をいくつかの三角形で試し、どれも180°になるから、
「三角形の内角の和は180°である といえる」と学びます。
しかし、いくつかの三角形で示したにすぎず、この世に存在する全ての三角形について調べたわけではないこと、全ての三角形について調べることは不可能であることは忘れてはいけません。
ですが、小学生段階では、2つ3つの事象を確認しただけで帰納的な考えとして成立すると認めていいのです。
平行四辺形の面積の公式を考える
三角形の内角の和では、いくつかの三角形について調べました。調べる三角形の数が増えれば増えるほど、確証を得ることになりますね。
面積の公式の導き方では、少し異なる帰納的な考え方をします。
①等積変形して求める
②既習の図形に分けて求める
③不要な部分を取って求める
どの考えでも、平行四辺形の面積は、底辺✕高さで求められますね。
つまり、平行四辺形の面積の公式は底辺✕高さである。と言えます。
この場合、1種類の平行四辺形でしか考えていません。しかし、様々な考え方をした結果は、どれも底辺✕高さ となりました。
面積の公式を導く授業では、このような帰納的な考え方をするのです。
算数の学習は帰納的思考だらけ!
実は、算数の学習のほとんどは、帰納的思考で考えています。
例えば、12−9を計算するときには、10から1引いて、残りの2を足します。同じように、13−9も考えます。
すると、「10から1引いて、残りを足せばよい」という減加法のやり方になります。
この考え方は立派な帰納的思考ですね。
このように、算数の学習のほとんどは帰納的思考と密接に関わっているのです。