算数を究める

算数の基礎と雑学をわかりやすく解説します。よりよい算数授業と算数好き児童を増やすサイト

算数の基礎 算数雑学

算数に欠かせない『理想化』とは!?

投稿日:2020年4月28日 更新日:

算数の授業をしたことがあっても、『理想化』という言葉を知っている教員は、そう多くはないのではないでしょうか。

しかし、算数の授業は、この『理想化』なしにはなりたちません。このページでは算数における『理想化』とは、どういうことなのかを説明します。

大辞林では、

国語辞典の代表格、大辞林では、『理想化』について下のように載っています。

物事自分理想とする姿や状態にひきつけて、見た考えたりすること。 

算数では、学習するための不要なものを取り除いて、物事を理想的なものにして考えます。

それでは、算数の授業で、どのような『理想化』が行われているのか、例をあげてみていきます。

サッカーボールは球?

1年生の立体図形の学習では、身近にあるものを、その形に注目して仲間わけをします。

例えば、下の4つの形を仲間に分ける学習では、

転がる形と転がらない形で分けます。

そしてさらに、下のように3つの仲間に分けていきます。

たしかに、サッカーボールは「ボールのような形」です。

しかし、「サッカーボールは球(きゅう)か?」と問われれば迷ってしまう人もいるのではないでしょうか。

サッカーボールは五角形と六角形から作られます。ですから、角があるんですね。

しかし、算数の学習では、表面が滑らかであると理想的に考えて、球として扱うのです。

蛇足:正多面体は転がるのか?

1年生の学習では、サッカーボールや野球のボールは「転がる形」として扱います。一般的にも、「ボールだから転がるだろ。」と考えますよね。

では、下の正二十面体は、転がりますか?

では、正十二面体は?正四面体は?

正四面体は転がりそうにはないですよね。こう考えると、「転がる」という定義は何なんでしょうかね。そこまで深く考えないことも、理想化の1つなのかもしれません。

マシンのような正確さ

「1dLで2㎡ぬれるペンキがあります。このペンキ5dLでは、何㎡塗れますか?」

答えは、もちろん10㎡です。

が、1dLで2㎡ぬれるからといって、同じように、均一に、10㎡も塗れるかと言ったら、現実には難しいですよね。

授業中に「先生、全く同じように塗れるこの人はペンキ塗りのプロですか?」なんて言ったら確実に怒られます。

しかし、そのように考えないと問題として成り立たなくなりますね。

実際にやってみると違うかもしれないけれど、都合がいいように理想化して考えているんですね。

常に同じ速さで走る少年

5年生の速さの学習に、

「男の子が時速15kmの速さで、家から30km離れた親戚の家まで行くと、何時間かかるでしょう」

という問題があったとします。

この男の子は、常に時速15kmで走ります。ひと漕ぎ目から、時速15kmに加速し、止まるときは一瞬で止まるのです。

途中、信号に引っかかることもありません。カーブも上り坂も常に時速15kmで走ります。

時速15kmというのは、この男の子の平均的な速さを表しているのです。

もちろん授業では、「男の子の平均的な速さは時速15kmでした。」ということは暗黙の了解となっており、言及はしません。

途中、信号機もなく、まっすぐな道ですよ。速さは時速15km(平均)としますよ。という理想で考えているわけですね。

もし、理想化がなければ…。

もし、理想化をしなかったとしたら、

「男の子は、0.90 m/s2で加速しながら家をスタートし、途中5回の信号機にそれぞれ1分ずつ止まり、R100のカーブを…」

と、とんでもない問題になってしまいます。

 

このように、算数の学習では、知らず知らずのうちに『理想化』が行われているのです。授業中に、この『理想化』を指摘する児童もいるかもしれません。

「先生、表面張力があるから、もう少し水が入ります。」

「弟を追いかける自転車のお兄さんは、近づいたらお~いって呼ぶよね。」

などなど…。

こういった子を「馬鹿なこと言ってないの!」と一蹴するのではなく、その発言をどう授業に生かすのかが、腕の見せ所なのだと思います。

 

-算数の基礎, 算数雑学

執筆者:


関連記事

「計算のきまり」を理解させる方法

交換法則や結合法則、分配法則は、4年生で学習します。4年生の子どもにとって、式変形はとても難易度が高く、全く理解できない子も少なくありません。 小学校段階では、式変形の結果に注目するよりも、なぜその式 …

図は「書く?」「描く?」「画く?」

国語の学習のようですが、授業中に「あれ?どっちだ?」と思ったことのある人は多いはずです。どれだと思いますか?? 一般的に、「書く」は文字、「描く」は絵 という認識でしょう。 そもそも「図」とは… 図と …

割り切れる数を探そう!

割り切れる数の見つけ方を知ることで、わり算や約分が格段に楽になります!知っていないと損する割り切れる数の見つけ方を紹介します。

ひき算を学ぶ順番と扱う数値の理由

小学1年生におけるひき算の学習は、どのような段階を経るのか、また、教科書に出てくる問題の数値はどのように決められているのか解説します。 ひき算①:繰り下がりのないひき算 一番はじめに習うひき算は繰り下 …

小学校で習う8種類のグラフ

小学校算数では1年生から6年生までの間に8種類のグラフについて学習します。特徴を簡単に説明すれば、 数量の大小を比較するのは絵グラフと棒グラフ 数量の変化をとらえるのは折れ線グラフ 資料の部分と部分( …